大聖人様は『持妙法華問答抄』に、 「寂光の都ならずば、何(いづ)くも皆(みな)苦なるべし。本覚の栖(すみか)を離れて何事か楽しみなるべき。願はくは『現世安穏(げんぜあんのん)後生善処(ごしょうぜんしょ)』の妙法を持(たも)つのみこそ、只(ただ)今生(こんじょう)の名聞(みょうもん)御世の弄引(ろういん)なるべけれ。須(すべから)く心を一にして南無妙法蓮華経と我も唱へ、他をも勧(すす)めんのみこそ、今生人界の思出(おもいで)なるべき」(御書 三〇〇頁) と仰せであります。 この御文中「現世安穏後生善処」とは、法華経薬草喩品の御文でありまして、前文から拝しますと、仏様が種々に法を説かれることに対して、 「皆歓喜(かんぎ)し快(こころよ)く善利(ぜんり)を得せしむ。是(こ)の諸(もろもろ)の衆生、是の法を聞き已(おわ)って現世安穏にして後(のち)に善処に生じ云云」(法華経 二一七頁) と仰せられているのであります。 すなわち、妙法を聞いて信ずる人は、現世では安穏な生活を送ることができ、後世では善処、すなわち、諸仏の浄土に生まれることができると、三世にわたる広大なる仏様の功徳を仰せられているのであります。 また『秋元殿御返事』には、 「南無妙法蓮華経と唱へさせ給へ。『現世安穏(げんぜあんのん)後生善処(ごしょうぜんしょ)』疑ひなかるべし。法華経の行者をば一切の諸天、不退に守護すべき経文分明(ふんみょう)なり」(御書 三三四頁) と仰せられ、強い決意をもって、南無妙法蓮華経と唱え奉る者は、現世安穏後生善処疑いなく、一切の諸天善神が必ずその行者を守護すると仰せられているのであります。 さらに『上野殿御消息』には、 「総じて此の法華経を強く信じまいらせて、余念なく一筋(ひとすじ)に信仰する者をば、影の身にそふが如く守らせ給ひ候なり。相構へて相構へて、心を翻(ひるが)へさず一筋に信じ給ふならば、現世安穏後生善処なるべし」(同 九二三頁) と仰せであります。 この御文中「余念なく一筋に信仰する者」とは、すなわち自行化他にわたる信心を専(もっぱ)らにして、一筋に妙法を行ずる者を言い今日(こんにち)においては、来たるべき令和三年・宗祖日蓮大聖人御聖誕八百年、法華講員八十万人体勢構築の実現へ向けて、身軽法重(しんきょうほうじゅう)・死身弘法(ししんぐほう)の御聖訓を体し、勇猛果敢に折伏を行じ、信行に励む者のことであります。 すなわち、自行化他の信心に励む者は、必ずや大御本尊様の広大無辺なる功徳を得て、現世安穏後生善処は疑いないと仰せられているのであります。 今、宗門はいよいよ二年後に、宗祖日蓮大聖人御聖誕八百年の大慶事をお迎えすることになります。 私どもは千載一遇(せんざいいちぐう)の好機を迎えるに当たり、一人も遅れを取ることなく、敢然たる決意をもって勇猛果敢に折伏を行じ、もって御宝前にお誓い申し上げた法華講員八十万人体勢構築の誓願を必ず達成し、一人ひとりが広大無辺なる仏恩に報い奉るよう心から願うものであります。 どうぞ皆様には、いよいよ信心強盛(ごうじょう)に、一人も漏れることなく誓願達成へ向けて精進されますことを心からお祈りして、本日の挨拶といたします。 (大白法・令和元年5月16日号より抜粋) (令和元年8月掲載) |