「但し仏堂に入りて数愚案を廻らすに、 謗法の人を禁めて正道の侶を重んぜば、国中安穏にして天下泰平ならん」(御書二四四頁) とありますが、「正道の侶」とは爾前権経に対して真実の教え、つまり法華経を説き弘めるところの僧侶のことであります。 特に、その意味するところは三大秘宝の仏法を弘める人のことでありますが、ここでは「正道」とだけおしゃっております。 すなわち、仏法の上から正しく国を治める方策を考えてみると、正法を謗るところの 謗法の者を戒めて、正しい僧侶を重んずれば、国中は安穏にして天下泰平になるとの仰せであります。 先程も言いましたように、「正道の呂」とは法華経を弘める僧侶のことであり、大聖人様のことを指しているのです。 このことは『諸経と法華経と難易のこと』に、 「仏法は身体のごとし、世間はかげのごとし。体曲がれば影なゝめなり」(御書一四六九頁) とありますように、まさしく仏法は体であり、世間は影であります。 したがって、世の中が混乱する原因は一にかかって仏法の乱れ、すなわち正法を信ぜず、邪義邪法を信じているが故に、様々な苦難、色々な悪現象が起きるのであります。 よって、悪法を信ずれば、まず人心が乱れ、人心が乱れると政治も経済も、つまり世の中のあらゆる治世産業が乱れ、貪瞋癡の三毒が倍増して、果ては戦争がおきたり、国土全体が地獄の様相を呈して混乱することになるのです。 しかし、一切の 謗法を捨てて、実乗の一善たる三大秘宝の随一、本門の本尊に帰依すれば、その不可思議広大無辺なる妙法の力用によって、我ら衆生一人ひとりの生命が浄化されてくるのです。 そして、それが個から衆生世間全体へと広がり、社会が浄化されると、争いごとも消え、やがては依法たる国土世間全体までもが改革され、仏国土となっていくのであります。 『立正安国論』の原理はここにあるのであり、正を立てて国を安んずる、その根本の正を立てるということが一番大切であると示されているのであります。 ですから『立正安国論』の最後のほうの御文に、 「汝早く信仰の寸心を改めて速やかに実乗に一善に帰せよ。然れば即ち三界は皆仏国土なり、仏国其れ衰へんや。十方は悉く宝土なり、宝土何ぞ壊れんや。国 に衰微無く土に破壊無くんば身は是安全にして、心は是禅定ならん。此の詞此の言信ずべく崇むべし」(御書二五〇頁) とあります。 この御文は、御会式時に御住職が拝読しますね。 皆さん方も何度も聞いていらっしゃるのではないかと思います。 まさしく、私たちが妙法に帰依することによって仏国土を築いていくことができると仰せられているのであります。 我々は、この『立正安国論』の原理を一人ひとりが心肝に染めて折伏を行事ていくことが最も大事であり、あらゆる障害を乗り越えて、絶対の境界を確立するために妙法流布に生きるということは、自分自身も、そしてまた折伏を受けている方々、国土世間の多くの人たちをも幸せにするという、たいへん大事な行になるのであります。 また、このようなことから、常に『立正安国論』の原理をしっかりと拝して、一人ひとりが折伏をしていくことが尊いのであります。 (大白法より抜粋) (平成28年2月掲載) |