『立正安国論』の対告衆(たいごうしゅ)は、北条時頼であり、予言の大要は自界叛逆難・他国侵逼難の二難でありますが、実には一切衆生に与えられた諫暁書であります。 さらにまた、 「如(し)かず彼(か)の万祈を修せんよりは此(こ)の一凶(いっきょう)を禁ぜんには」(御書 二四一頁) と仰せのように、一往付文(ふもん)の辺(へん)は専(もっぱ)ら法然の謗法を破折しておりますが、再往元意(がんい)の辺は広く諸宗の謗法を破折しておられるのであります。 したがって、念仏破折が主であり、権実相対の上から破折されていることになりますが、「立正」の意義から拝するならば、一重立ち入って、天台過時の迹を破し、法華本門を立てて正とする故に本迹相対となります。 さらにまた、一歩深く立ち入って拝せば、久遠下種の正法、すなわち末法弘通の三大秘法の妙法蓮華経を立てて、本果脱益(だっちゃく)の釈尊の法華経を破するが故に種脱相対となるのであります。 つまり、「立正」の「正」とは、下種の本尊にして三大秘法がその正体であります。 また、「安国」の両字について、総本山第二十六世日寛上人は、 「文は唯(ただ)日本及び現在に在り、意は閻浮提(えんぶだい)及び未来に通ずべし」(御書文段 五頁) と御指南であります。 すなわち、国とは一往は日本国を指すも、再往は全世界、一閻浮提を指しているのであります。 さらにまた、「立正」の両字につきましては、 「立正の両字は三箇の秘法を含むなり」(同 六ページ) と仰せであります。 すなわち「立正」=「正を立てる」とは、末法万年の闇を照らし、弘通するところの本門の本尊と戒壇と題目の三大秘法を立つることであり、国土安穏のためには、この本門の本尊と戒壇と題目の三大秘法の正法を立つることこそ、最も肝要であると仰せられているのであります。 されば、私どもは混沌(こんとん)とした今日(こんにち)の惨状を見る時、今こそ、講中一結・異体同心して『立正安国論』の御聖意を拝し、全力を傾注して折伏を行じ、もって妙法広布に挺身(ていしん)していくことがいかに大事なことであるかを明記していただきたいと思います。 (大白法 令和5年10月16日号 掲載) (令和5年12月掲載) |