日蓮正宗 昭倫寺

日如上人御言葉 五月度 広布唱題会の砌

 令和4年5月31日 於 総本山客殿

『聖愚問答抄』を拝しますと、
「人の心は水の器にしたがふが如く、物の性(しょう)は月の波に動くに似たり。故に汝(なんじ)当座は信ずといふとも後日は必ず翻(ひるが)へさん。魔来たり鬼(き)来たるとも騒乱(そうらん)する事なかれ。夫(それ)天魔は仏法をにくむ、外道は内道をきらふ。されば猪(い)の金山(こんぜん)を摺(す)り、衆流(しゅる)の海に入(い)り、薪(たきぎ)の火を盛んになし、風の求羅(ぐら)をま(増)すが如くせば、豈(あに)(よ)き事にあらずや」(御書 四〇九頁)
と仰せであります。

そもそも人の心というものは、水の器に従うが如く、移ろいやすく、変わりやすいのであります。
したがって、初めは固く決意をしていても、途中で思わぬ障魔に紛動されて、目的を達成せずに終わることがよくあります。

まさにこの御文は、こうした障魔に誑(たぶら)かされず、不退転の信心を貫くように御教示あそばされているのであります。
すなわち「猪と金山」「衆流と海」「薪と火」「風と求羅」の譬えを用いられて、いかなる障魔が競い起ころうとも固い決意をもって、いよいよ信心を強盛にしていくように諭(さと)されているのであります。

「猪の金山を摺り」とは、猪(いのしし)が金山(きんざん)の光っているのを見て憎(にく)み、身体をこすりつけてその輝きを消そうとしますが、身体をこすりつければつけるほど、かえって金山は輝きを増すように。
「衆流の海に入り」とは、多くの川の水の如き大難が、海の如き法華経の行者に競い起こるように。
「薪の火を盛んになし」とは、火に薪を加えることによって火の勢いがますます盛んになるように。
「風の求羅をま(増)す」とは、迦羅(から)求羅という虫は身体は微細でありますが、ひとたび風を得れば、その身体は大きくなると言われているように、障魔が競い起きることが、かえって信心を高めていく機縁になると仰せられているのであります。

(中略)

本年、宗門は「今こそ 折伏の時」の標語のもとに、僧俗一致して前進をしておりますが、その行く手にはあらゆる障魔が競い起こることは必定であります。
しかし、ただいまの御教示の如く、魔が競い起きた時こそ、信心決定の絶好の機会と捉え、一人ひとりが妙法受持の大功徳を確信して、決然と魔と対決し、粉砕していくことが大事であります。

所詮、いかなる魔も仏様には絶対に勝てないのでありますから、大御本尊様への絶対信をもって、いよいよ信心強盛に唱題に励み、折伏を行じ、御宝前にお誓い申し上げました本年度の折伏誓願を必ず達成されますよう心からお祈り申し上げ、本日の挨拶といたします。


(大白法・令和4年5月16日号より抜粋)

(令和4年7月掲載)