(立正安国論 御書二四九頁四行目) 若し残る所の難(なん)悪法の科(とが)に依って並び起こり競ひ来たらば其の時何(いかん)が為(せ)んや。帝王は国家を基(もとい)として天下を治め、人臣は田園を領して世上を保つ。而るに他方の賊来たりて其の国を侵逼(しんぴつ)し、自界叛逆(ほんぎゃく)して其の地を掠領(りょうりょう)せば、豈(あに)驚かざらんや豈騒がざらんや。国を失ひ家を滅せば何(いず)れの所にか世を遁(のが)れん。汝須(すべから)く一身の安堵(あんど)を思はゞ先ず四表の静謐(せいひつ)を祈(いの)るべきものか。 (通解) もし、未だに残っている自界叛逆・他国侵逼の難が、悪法を信仰する失によって、並び競い起こってきたならば、その時、どうするのか。 帝王は国家を基盤として天下を統治し、人民・家臣は、田園を所領して生活を保っていくものである。 それなのに、他方の賊が来襲して国を侵略し、国内に反乱が起きて土地を掠奪されるならば、どうして驚かずにおられようか、どうして騒がないでおられようか。 国土を失い、家を滅してしまったならば、何処へも逃れることはできない。 あなたが一身の安堵を願うならば、まず四表(世界中)の静謐(泰平)を、祈るべきではないのか。 |