(立正安国論 御書二三六頁十五行目) 日月度を失ひ時節返逆(ほんぎゃく)し、或は赤日(しゃくじつ)出で、黒日出で、二三四五の日(ひ)出(い)で、或は日蝕して光無く、或は日輪一重二三四五重輪現ずるを一の難と為すなり。二十八宿度を失ひ、金星・彗星・輪星・鬼星・火星・水星・風星・ちょう星(*1)・南斗(なんじゅ)・北斗(ほくと)・五鎮(ごちん)の大星・一切の国主星・三公星・百官星、是くの如き諸星各々(おのおの)変現(へんげん)するを二の難と為すなり。大火(たいか)国を焼き万姓焼尽(しょうじん)せん、或は鬼火・竜火・天火・山神火・人火(じんか)・樹木火・賊火あらん。是くの如く変怪(へんげ)するを三の難と為すなり。大水百姓をひょう没(*2)し、時節反逆して冬雨ふり、夏雪ふり、冬時(とうじ)に雷電霹|(へきれき)し、六月に氷霜雹(ひょうそうばく)を雨(ふ)らし、赤水(しゃくすい)・黒水・青水(しょうすい)を雨らし、土山(せん)・石山(しゃくせん)を雨らし、沙(しゃ)・礫(りゃく)・石(しゃく)を雨らす。江河逆(さか)しまに流れ、山を浮べ石を流す。是くの如く変ずる時を四の難と為すなり。大風万姓を吹き殺し、国土山河樹木一時に滅没(めつもつ)し、非時(ひじ)の大風・黒風・赤風・青風・天風・地風・火風・水風あらん、是くの如く変ずるを五の難と為すなり。天地国土亢陽(こうよう)し、炎火洞燃(どうねん)として百草亢旱(こうかん)し、五穀登(みの)らず、土地赫燃(かくねん)して万姓滅尽せん。是くの如く変ずる時を六の難と為すなり。四方の賊来たりて国を侵し、内外の賊起こり、火賊・水賊・風賊・鬼賊ありて百姓荒乱し、刀兵(とうひょう)劫起(こうき)せん。是くの如く怪(け)する時を七(しち)の難と為すなり」と。 (通解) (仁王経に)まず、日や月が運行の規則性を失い、季節が逆になり、あるいは赤い太陽が出たり、黒い太陽が出たり、一度に二・三・四・五の太陽が出たり、あるいは日蝕で太陽の光がなくなったり、あるいは太陽が一重・二・三・四・五の輪を現ずるのを第一の難とする。 次に二十八宿が運行の規則性を失い、金星・彗星・輪星・鬼星・火星・水星・風星・ちょう星(*1)・南斗・北斗・五鎮の大星・一切の国主星・三公星・百官星等々多くの星が、それぞれ異常な現象を起こすのを第二の難とする。 第三に、大火が国を焼き、万民を焼き尽くすであろう。 あるいは、鬼火・竜火・天火・山神火・人火・樹木火・賊火が起こるであろう。 このように異常が起こるのを第三の難とする。 第四に、大洪水が民衆を押し流し、季節が逆になって、冬に雨が多く降り、夏に雪が降る。 冬に雷が激しく鳴り、六月に氷や霜・雹が降り、赤水・黒水・青水を降らし、また土や石を山ほど降らし、砂や小石や石を降らす。 河は逆さまに流れ、山を浮かべ石を流すほどの大洪水となる。 このような異変が起きるのを第四の難とする。 第五に、大風が万民を吹き殺し、国土、山河、樹木が一時のうちに滅没し、時節はずれの大風・黒風・赤風・青風・天風・地風・火風・水風が吹き荒れる。 このような異変が起きるのを第五の難とする。 第六に、天地・国土が大旱魃で乾ききり、燃え上がらんばかりの猛暑によって百草はみな枯れ五穀は実らず、土地が焼けて、万民は滅亡するであろう。 このような異変が起きるのを第六の難とする。 最後に、四方の国から賊が来襲して国土を侵略し、国内にも賊が出て内乱を起こし、火賊・水賊・風賊・鬼賊があって民衆を脅かし、いたるところで戦乱が起こるであろう。 このような異変を生ずるのを第七の難とするのである。 |