日蓮正宗 昭倫寺

立正安国論(r1.12)


(立正安国論 御書二四五頁四行目)

 又云はく「殺(せつ)に三(み)つ有り、謂(い)はく下中上(げちゅうじょう)なり。下とは蟻子(ぎし)乃至(ないし)一切の畜生なり。唯(ただ)菩薩の示現生(じげんしょう)の者を除く。下殺(げせつ)の因縁を以て地獄・畜生・餓鬼に堕(だ)して具(つぶさ)に下の苦を受く。何を以ての故に。是の諸(もろもろ)の畜生に微(わず)かの善根有り、是の故に殺す者は具(つぶさ)に罪報を受く。中殺(ちゅうせつ)とは凡夫の人より阿那含(あなごん)に至るまで是を名づけて中と為す。是の業因(ごういん)を以て地獄・畜生・餓鬼に堕して具に中(ちゅう)の苦を受く。上殺(じょうせつ)とは父母乃至阿羅漢・辟支仏(びゃくしぶつ)・畢定(ひつじょう)の菩薩なり。阿鼻(あび)大地獄の中に堕す。善男子、若し能(よ)く一闡提を殺すこと有らん者は則ち此の三種の殺の中に堕せず。善男子、彼の諸の婆羅門等は一切皆(みな)(これ)一闡提なり」已上。


(通解)

また(涅槃経に)いわく、
「殺生の罪には三種類あり、それは下殺・中殺・上殺である。
下殺とは、蟻の子をはじめ一切の畜生を殺すことである。
ただし、菩薩が畜生の姿を示現して生まれてきたものは除く。
下殺の罪によって、地獄・畜生・餓鬼の三悪道に堕し、下殺相応の苦を受ける。
何故ならば、これら諸々の畜生にも、わずかながら善根がある故に、これを殺せば相応の罪報を受けるのである。
中殺とは、凡夫の人より阿那含(小乗教における四段階の果位のうちの第三果)までを殺すことを中殺という。
この罪によって、地獄・畜生・餓鬼に堕し、中殺相応の苦を受ける。
上殺とは、父母をはじめ阿羅漢(小乗教の第四果で、声聞界の最高位)・僻支仏(縁覚のこと)・不退の菩薩を殺すことである。
これを犯せば阿鼻大地獄の中に堕ちる。
善男子よ、もし一闡提を殺した者は、この三種の殺の罪報の中には堕ちないのである。
善男子よ、かの正法誹謗の諸々の婆羅門などは、全て皆これ一闡提である」
以上。