(立正安国論 御書二四三頁八行目) 客聊(いささか)和(やわ)らぎて曰く、未だ淵底(えんでい)を究めざれども数(しばしば)其の趣を知る。但し華洛(からく)より柳営(りゅうえい)に至るまで釈門に枢(すう)けん(※1)在り、仏家に棟梁(とうりょう)在り。然れども未だ勘状(かんじょう)を進(たてまつ)らぜず、上奏(じょうそう)に及ばず。汝賤(いや)しき身を以て輙(たやす)く莠言(ゆうげん)を吐く。其の義余り有り、其の理謂(いわ)れ無し。 (通解) 客はいささか和らいで言った。 自分は未だあなたの仰せを奥底まで分かったわけではないが、だいたい言われることの趣旨は了解できた。 ただし京都から鎌倉に至るまで、仏教界には枢要ともいうべき立派な僧が大勢いる。 それにも拘わらず、未だ誰一人として、法然の誤りを指摘した訴状を、幕府に提出した者もなければ、天皇に上奏した者もいない。 それをあなたは賤しい身分でありながら、法然に対して、平気で汚い謗言を吐いている。 あなたの言うところの義は不十分で、その理にはいわれがない。 |