(立正安国論 御書二四五頁十一行目) 仁王経に云はく「仏(ほとけ)波斯匿王(はしのくおう)に告げたまはく、是の故に諸の国王に付嘱(ふぞく)して比丘・比丘尼に付嘱せず。何を以ての故に。王のごとき威力(いりき)無ければなり」已上。 涅槃経に云はく「今(いま)無上の正法(しょうぼう)を以て諸王・大臣・宰相(さいしょう)及び四部の衆に付嘱す。正法を毀(そし)る者をば大臣四部の衆、当(まさ)に苦治(くじ)すべし」と。又云はく「仏の言(のたま)はく、迦葉(かしょう)能(よ)く正法を護持(ごじ)する因縁を以ての故に是の金剛身(こんごうしん)を成就することを得たり。善男子、正法を護持せん者は五戒を受けず、威儀(いぎ)を修せずして、応(まさ)に刀剣・弓箭(きゅうせん)・鉾槊(むさく)を持すべし」と。又云はく「若し五戒を受持せん者有らば名づけて大乗の人と為すことを得ざるなり。五戒を受けざれども正法を護(まも)るを為(もっ)て、乃(すなわ)ち大乗と名づく。正法を護る者は、当に刀剣(とうけん)器仗(きじょう)を執持(しゅうじ)すべし。刀杖(とうじょう)を持つと雖も、我是等(これら)を説きて、名づけて持戒と曰(い)はん」と。 (通解) また、仁王経にいわく。 「仏が波斯匿王に告げて仰せられるには、この故に仏法守護を諸々の国王に付嘱して、僧・尼には付嘱しないのである。 何故かといえば、王のごとき仏法守護の威力がないからである」 以上。 また、涅槃経にいわく。 「今、無上の正法の守護を、諸王・大臣・宰相及び四部の衆(僧・尼・俗男・俗女)に付嘱する。 正法を毀らんとする者を、大臣・四部の衆は、まさに厳しく対治せよ」 と、 またいわく。 「仏が仰せられるには、迦葉よ、自分はよく正法を護持した因縁によって、この金剛不壊の身を成就することができたのである。 善男子よ、正法を護持する者は、五戒(不殺生戒・不偸盗戒・不妄語戒・不邪淫戒・不飲酒戒)を受けず、細かな威儀も修行することなく、刀剣・弓矢・槍を持って法を護るべきである」 と。 また、いわく。 「もし、五戒を受持する者があっても、それを以って大乗の人と称することは出来ない。 五戒は受けなくても、正法を護ることを以って、大乗の人というのである。 正法を護る者は、まさに刀剣・武器を固く持つべきである。 刀や武器を持ったとしても、自分はこれらを名づけて持戒の人と称するのである」 と。 註 波斯匿王:中インドの舎衛国の王で、釈尊に帰依し外護した為、舎衛国は釈尊と深縁な仏都となった。 |