転重軽受法門(御書四八〇頁三行目) 涅槃(ねはん)経に転重軽受(てんじゅうきょうじゅ)と申す法門あり、先業の重き今生につ(尽)きずして、未来に地獄の苦を受くべきが、今生にかゝる重苦に値ひ候へば、地獄の苦しみぱっとき(消)へて、死に候へば人・天・三乗・一乗の益をう(得)る事の候。不軽菩薩(ふきょうぼさつ)の悪口罵詈(あっくめり)せられ、杖木瓦礫(がりゃく)をか(被)ほるも、ゆへなきにはあらず。過去の誹謗(ひぼう)正法のゆへかとみへて「其罪畢已(ございひっち)」と説かれて候は、不軽菩薩の難に値ふゆへに、過去の罪の滅するかとみへはん(侍)べり。 (通解) 涅槃経には転重軽受という法門が説かれている。 それは過去世の重い謗法が今生に消滅しないので、来世に地獄の苦痛を受けなければならないのであるが、今世にこのような重苦に値へば、来世に受けるべき地獄の苦痛がたちまちに消え失せて、死してからは人天の中の勝妙な果報が得られ、また三乗の果や一乗の仏果を得ることが出来る。 不軽菩薩が悪口罵詈され、杖木瓦礫を蒙ったのも理由がないわけでない。 法華経には「其の罪畢(お)え已(おわ)る」と説かれている。 不軽菩薩が難に値うことで、過去世の謗法罪を滅することが出来たと、経文に説かれている。 |