選時抄(御書八三五頁 四行目) 問うて云はく、機にあらざるに大法を授けられば、愚人は定めて誹謗をなして悪道に堕つるならば、豈(あに)説く者の罪にあらずや。答へ云はく、人路をつくる、路に迷ふ者あり、作る者の罪となるべしや。良医(ろうい)薬を病人にあたう、病人嫌ひて服せずして死せば、良医の失(とが)となるか。 (通解) 質問いたします。 機根が熟していない者に法華経を授けてしまえば、愚人は必ず誹謗を起こして悪道に堕ちることになってしまうだろう、そうなれば、法華経を説く者の罪になるのではないだろうか。 お答えいたします。 人が目的地に行けるように道を作ったが、その道に迷う者がいたら、作った者の罪になるであろうか。 良医が薬を調合して病人に与えたのに、病人が嫌がって服さずに死んだら、良医の失になるであろうか。 (共に罪や失にはならない。信仰の道も同じように、説く方に問題があるのではなく、教化される方に問題があるのだ。) |